2026-09-09
緑内障手術後のケア、眼圧が正常でも視神経が傷つく理由とは?
緑内障は手術後も眼圧が正常でありながら視神経の障害が進行するケースがあります。術式ごとのケアの違い、点眼薬の役割、OCTや視野検査による定期検診の重要性を眼科専門医が詳しく解説します。


緑内障手術後のケアを適切に行わないと、眼圧が正常に保たれていても視神経の障害が知らず知らずのうちに進行してしまうことがあります。手術が無事に終わったと聞くと安心してしまうのは当然ですが、緑内障は手術後こそがケアの始まりです。視神経は一度損傷を受けると現在の医学水準では元に戻せないため、残された視野を守り抜くことこそが治療の核となります。
今回は緑内障手術後の管理が重要である理由から、具体的なケア方法まで分かりやすく解説します。
1. 緑内障手術の種類によって術後のケアはどう変わる?

緑内障手術後の管理は、どの術式を受けたかによって異なります。現在行われている主な緑内障手術には、大きく分けて3つの方法があります。
線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)は、目の中に房水を排出するための新たなバイパスを作る手術で、眼圧を大幅に下げる必要がある重症の緑内障によく用いられます。術後はブレブ(濾過胞)の状態を継続的に確認することが極めて重要です。ブレブが過剰に癒着して塞がってしまうと、通り道が閉塞して眼圧が再上昇することがあるためです。定期検診でブレブの形態と機能をチェックし、必要に応じて細い針で癒着を剥離する処置(ニードリング)を行うこともあります。
アーメドバルブインプラント手術は、房水の排出をサポートする人工デバイスを目の中に挿入する術式です。これまでの手術で眼圧コントロールが困難だったケースや、血管新生緑内障などの難治性疾患に多く用いられます。術後はドレナージデバイスの周囲に線維化が起きたりチューブの位置がずれたりすることがあるため、器具の状態と眼圧の変動を同時にモニタリングすることが大切です。
XEN(ゼン)インプラント挿入術は低侵襲な術式(MIGS)で、極めて細いジェル状のチューブを留置して房水の排出口を確保します。切開範囲が小さく回復も比較的早いため、初期から中等度の緑内障に適応されます。ただし、チューブが極めて細いため、線維化によって閉塞してしまうリスクもあります。術後は抗線維化治療や継続的な経過観察を行い、スムーズな排出が保たれているか確認していく必要があります。
どの術式を選択した場合でも、手術後の適切な管理は共通して不可欠です。術式ごとに注意すべきポイントが異なるため、担当医師とご自身の術式に合わせたケア計画を立てることが推奨されます。
2. 手術直後に眼圧が乱高下するのはなぜ?
手術直後は房水の流出量や目の中の組織反応が絶えず変化しているため、緑内障手術後に一時的な眼圧の上昇や低下が見られることは自然な生理現象です。特に術後数日から数週間の間は、細胞の反応や創傷治癒のプロセスが活発に起きているため、とりわけきめ細やかな観察が必要な時期といえます。
眼圧が低すぎると網膜や脈絡膜に悪影響を及ぼす恐れがあり、逆に急上昇すると手術の効果が損なわれてしまいます。また出血や炎症、眼内炎といった合併症の有無もこの時期に併せて確認する必要があるため、定められた通院スケジュールをしっかり守ることが重要です。
3. 眼圧が正常なのに、なぜ検査を受け続けなければいけないの?

一般的に、眼圧の正常値は21mmHg以下とされています。しかし、韓国や日本をはじめとするアジア圏では、眼圧が正常範囲内にもかかわらず視神経が徐々に傷ついていく「正常眼圧緑内障」の割合が非常に高いことが知られています。
実際に韓国の大規模な疫学調査(ナミル研究/Namil Study)では、開放隅角緑内障患者の約77%が眼圧21mmHg以下の正常眼圧緑内障に該当すると報告されています。つまり、数値の見た目だけに安心していてはいけないのです。
OCT(光干渉断層計)検査で視神経線維層が徐々に薄くなっていたり、視野検査で欠損範囲が広がっていたりする例は珍しくありません。眼圧の数値だけでなく、視神経そのものの状態を精密に確認し続けなければならない理由はここにあります。
4. 緑内障の点眼薬にはどんな種類があり、何が違う?

緑内障手術後も状態に応じて点眼薬による治療を継続することがあります。使用される目薬は作用機序によって分類されます。
β遮断薬(ベータブロッカー):房水の産生を抑制して眼圧を下げます。心疾患や喘息の持病がある方は事前の医師への相談が必須です。
プロスタグランジン関連薬:房水の排出を促進する薬剤で、1日1回の点眼で効果が持続するため、多くの患者様で第一選択薬として広く処方されます。
α2受容体作動薬:房水産生を抑制しつつ、排出も一部促進します。他の点眼薬と併用されることが一般的です。
炭酸脱水酵素阻害薬:房水の生成に関与する酵素の働きを抑えます。点眼薬だけでなく内服薬としても処方されます。
ロープレサ(Rhopressa/ネタルスジル):線維柱帯の抵抗を減らし、本来の流出経路の機能を高める新薬です。従来の薬剤だけではコントロールが不十分な際の新たな選択肢として活用されています。
5. 眼圧が安定しても点眼薬は使い続けるべき?
眼圧が安定したからといって、自己判断で緑内障の点眼薬を中止してしまう方がいらっしゃいます。しかし、術後に処方される点眼薬は単に眼圧を下げるだけでなく、炎症を抑えたり、感染を予防したり、手術部位の過剰な癒着を防ぐ重要な役割も担っています。
点眼の回数や使用期間は個々の患者様の経過によって異なるため、必ず主治医の指示に従って使用してください。万が一、点眼後に強い充血や痛み、急な視力低下が現れた場合は、速やかに受診してください。
6. 手術後に日常生活で守るべき注意点は?

手術直後は目に圧力がかかる行為を避けることが最優先です。目を強くこすると術部に負担がかかり、ブレブの破損につながる危険性があります。重い物を繰り返し持ち上げる、長時間頭を下に向ける、負荷の高い筋力トレーニングを行うといった動作は一時的に眼圧を急上昇させるため、一定期間は控える必要があります。
就寝時には手術を受けた側の目が枕や寝具で圧迫されないよう、医療機関で指示された保護眼帯を着用して休むのが安全です。
7. 定期検診で必ず受けるべき必須検査とは?

① OCT検査(光干渉断層計)
視神経線維層の厚みの変化をマイクロメートル単位で精密に測定します。患者様自身に自覚症状が全くない段階でも、神経線維が薄くなり始めている微細な変化をいち早く捉えることができます。
② 視野検査
実際に見えている視覚の範囲(視野)に狭まりや欠落がないかを評価する機能検査です。緑内障は初期には周辺視野から欠けていくことが多く、自分では異常に気づきにくい疾患です。米国眼科学会(AAO)の臨床ガイドラインでも、手術後に眼圧が良好に保たれていても視野障害が進行するケースがあるため、自動視野検査を定期的に受けることが推奨されています。
緑内障手術後によくある質問(FAQ)
Q1. 手術後、運動はいつから再開できますか?
術後の軽いウォーキングは比較的早い段階から可能ですが、ウエイトトレーニングや登山など腹圧をかける激しい運動は、医師と相談のうえ段階的に再開するのが安全です。
Q2. コーヒーやお酒は飲んでも大丈夫ですか?
カフェインは一時的な眼圧変動を引き起こす可能性があり、飲酒は点眼薬の吸収や炎症の回復に影響を与えることがあるため、術後しばらくは控えるのが無難です。
Q3. スマートフォンを長時間見ると緑内障が悪化しますか?
画面を長時間近くで見ること自体が緑内障を直接悪化させる決定的な証拠はありませんが、眼精疲労を軽減し、こまめに目を休める習慣を心がけることは健康維持に大切です。
緑内障は手術を終えた後も、眼圧や視神経の状態を継続的にモニタリングし、必要に応じて点眼薬の調整や追加治療を行うことが大切です。
聖母真(ソンモジン)眼科では、大韓眼科学会指導専門医でありカトリック大学校医科大学眼科学教室の臨床教授を務める眼科専門医が直接診療にあたり、眼圧測定・OCT・視野検査を駆使して患者様一人ひとりの状態を精密に分析しています。術後の定期的な経過観察とオーダーメイド診療により、眼圧の微細な変化や視神経障害の進行の有無を徹底的にモニタリングいたします。
生涯にわたって大切な視野を守るために、まずは定期検診から始めてみませんか?
まとめ
緑内障手術後のケアは手術そのものと同じくらい重要です。眼圧が正常値であっても視神経の障害が進行する場合があるため、定期的な眼科検診を欠かさず受けましょう。
緑内障の初期サインやセルフチェック法、日常のケアについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。